革新的衛星技術実証4号機 実証テーマ

耐放射線性能を宇宙で実証 -次世代CMOS撮像素子CF-CAM

マッハコーポレーション株式会社

営業部 技師長 野口一秀

原発の廃炉や核融合炉でも活躍してきた“タフなカメラ”が、今度は宇宙へ!
マッハコーポレーションが開発した「CF-CAM」は、強い放射線にも耐えるCMOS撮像素子を搭載したカラーカメラ。福島県の航空宇宙産業推進プロジェクトとも連携し、革新的衛星技術実証4号機での軌道上実証に挑む。
これまでの開発秘話から、宇宙での活用、そしてその先の未来まで――技師長・野口一秀さんにお話を伺った。

- ご自身の業務内容について教えてください。

野口  現役の時にNEC東芝スペースシステム株式会社(当時)で、小惑星探査機「はやぶさ」および金星探査機「あかつき」などに搭載するカメラの開発を担当しました。その経験を活かして、現在マッハコーポレーションでJAXAとの共同研究で開発した耐放射線CMOS撮像素子を使った、非常に強い放射線でも壊れないカメラの開発を担当しました。このカメラは、福島第一原発の廃炉処理用カメラとして採用され、その後国際原子力機関(IAEA)にも納入されています。更に、量子科学技術研究開発機構(QST)が国際プロジェクトとして開発に参加している核融合炉(ITER)の保守点検用カメラの試作機にも採用されました。このCMOS撮像素子を将来の小型人工衛星搭載用にも使えるように軌道上実証のためのCF-CAMの開発も担当しました。

- 今回、革新的衛星技術実証4号機に応募されたテーマの概要と今回の実証を通じて期待する成果を教えてください。

野口  耐放射線カメラ開発には、地域復興実用化開発等促進事業費補助金(福島県浜通り地域等の早期の産業復興を実現するため)の支援を受けました。福島市?は、将来構想としての航空宇宙関連産業推進事業に力を入れており、この構想に沿った衛星搭載用カメラの開発および打ち上げと運用に対する要望を受けて、マッハコーポレーションとしてこの期待を実現するために、革新的衛星技術実証4号機搭載用CF-CAMに応募し採択されました。福島県では、この実績をもとに、航空宇宙関連産業推進事業の発展に寄与することを期待されています。
具体的な期待する成果は以下の通りです。

  1. 福島県が開発に関わった人工衛星用カメラから撮った日本の、特に福島県の宇宙から見た画像を一般公開することで、福島県の航空宇宙関連産業推進事業の成果を県内はもとより、日本中にアピールしたい。
  2. 軌道上実証を行うことで、耐放射線CMOS撮像素子の信頼性を担保でき、今後の小型衛星搭載用地球観測カメラの設計および製造ができることで福島県の航空宇宙関連産業推進事業の発展に寄与する。
  3. マッハコーポレーションの人工衛星搭載用カメラ開発の技術力をアピールすることで、今後の原発や原子力関連機関などへの拡販を有利に進める。
  4. 更に、将来的にはこのカメラをマルチバンドカメラやハイパースペクトルカメラに発展させることにより、小型衛星のコンステレーションによる宇宙を使った日本の有事の際の安全保障構想への参画および貢献を図っていく。
耐放射線地球観測カラーカメラ CF-CAM
3D CADによる機構設計

- 革新的衛星技術実証プログラムへの応募動機を教えてください。

野口  耐放射線カメラ開発には、地域復興実用化開発等促進事業費補助金(福島県では、浜通り地域等の早期の産業復興を実現するため)の支援を受けました。福島県の将来構想としての航空宇宙関連産業推進事業に力を入れており、この構想に沿った衛星搭載用カメラの開発および打ち上げと運用に対する要望を受けて、マッハコーポレーションとしてこの期待を実現するために、革新的衛星技術実証4号機搭載用CF-CAMに応募し採択されました。福島県は、この実績をもとに、航空宇宙関連産業推進事業の発展に寄与することを期待しています。

- ほかの実証機会と比較して、「革新的衛星技術実証プログラム」を選ばれた理由がありましたら教えてください。

野口  福島県の将来構想としての航空宇宙関連産業推進事業に力を入れており、この構想に沿った衛星搭載用カメラの開発および打ち上げと運用に対する要望を受けていました。ちょうどタイミングよく公募が開始されたのがこのプログラムだったので応募しました。

FPGAコード開発
焦点調整
振動解析

熱サイクル試験の様子

- 開発において苦労した点、克服するための工夫などあれば教えてください。

野口  

  1. 提案要請書に記載の搭載コンポーネントに許容される最大寸法の中で、最大のパフォーマンスを達成できるCF-CAMの仕様をどのように設定するかについて、その実現性とのバランスをどこまで追求できるかについては、現役時代に培った衛星搭載用カメラ開発の知見と経験を活かしました。
  2. 上記条件の中で、光学系への光学性能要求、機械的性能要求および熱的性能要求をどのような設定するかについても上記1)項と同じ知見と経験を活かしました。
  3. 衛星バス側とのテレメトリ、コマンドおよびミッションデータのインタフェース調整とその結果に基づく設計を評価試験装置へ反映しました。
  4. 完成後のプロトフライト試験、特にEMC試験、機械環境試験および熱真空試験の規格に沿った試験をどこの設備を使って実施できるか、またその評価試験の規格および評価試験の内容の制定については公共の試験設備および大学の熱真空チャンバを借用しました。
  5. 特に熱数学モデルの熱平衡試験の結果によるフィードバックと熱平衡試験のコンフィギュレーション、試験の実施方法の検討およびJAXAの承認をもらうためのドキュメンテーションについては、現役時代に付き合いのあった専門会社に当時のコネクションを利用して委託しました。
  6. 真空中を模擬したCF-CAMを小型光学チャンバに入れての調整方法については、光学機器メーカに協力してもらって、小型の真空チャンバを用意してもらって調整を実施しました。

- 実証後の展望(次の研究開発や事業計画等)をお聞かせください。

野口  将来的にはこのCF-CAMカメラをマルチバンドカメラやハイパースペクトルカメラに発展させることにより、小型衛星のコンステレーションによる宇宙を使った安全保障構想への参画および貢献を図っていきます。


» 耐放射線地球観測カラーカメラ CF-CAM