研究の概要
人工衛星に搭載されるバッテリは現在Li-ion電池が使用されています。宇宙空間といった高真空環境下で使用されること、また打上後に修理交換ができないことから、地上で使用される電池に比べて、高信頼・長寿命の設計が必要となります。 これまで、第3世代の宇宙用Li-ion電池を開発してきましたが、オール電化衛星や海外製宇宙用Li-ion電池に対する競争力強化を目指して、第4世代Li-ion電池の開発を進めています。
本研究では、さらに先を見据えてより軽量化(高エネルギー密度化)した電池の実現を目指します。
具体的には、現在主流の第2、第3世代の宇宙用Li-ion電池を衛星に適用した場合に比べて、蓄電デバイス質量を半減させることを目標に、第5世代として270Wh/kg級を目指しています。また、競争力の観点で、蓄電デバイスの低コスト化も必要と考えており、低コスト化に向けた研究にも着手しています。
研究成果(より詳細な研究内容)
蓄電デバイスの軽量化研究
開発中の第4世代Li-ion電池までは、実績を優先し、性能向上の観点で同じ正極、負極材料のLi-ion電池をベースとしてきました。
第5世代では、大幅にエネルギー密度の向上を図るため、従来の延長線上ではない材料系や電池構造を検討する必要があります。現時点では、Li-ion電池という範疇を中心に、以下の構成の蓄電デバイスを検討しています。
- 電解液式Li-ion電池(各種正極材料、負極材料の適用検討)
- 全固体Li-ion電池(硫化物系)
- その他
前述のように、軽量化だけでなく長寿命化も必要なため、基礎データを取得しながら適用に向けた基礎研究を行っています。
蓄電デバイスの低コスト化研究
宇宙用電池は高真空環境、微小重力環境で長期に使用され、また、ロケットで打ち上げる際の振動・衝撃に対する耐性を持たせる必要があります。特に、実利用衛星では、10年、20年といった長期間の運用を保証する必要があるため、 より厳しい寿命要求に応えられる設計をする必要があります。そのため、民生用電池をそのまま使用することができず、特にケースが特殊仕様になり、製品コストも高くなります。一方で、競争力強化の観点では低コスト化が必要になるので、 「上記機能を維持した状態で、より簡便な方法で電池設計やケース設計・製造を可能にするか」がカギとなると考えています。
このような観点で、低コスト化を実現可能にするための構成部材の基礎研究を行っています。