HTV搭載薄膜太陽電池フィルムアレイシート実証実験(SFINKS)の不具合に係る原因究明結果について
宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(平成28年12月9日、日本標準時打上げ)に搭載した、「HTV搭載導電性テザー実証実験(KITE)」および「薄膜太陽電池フィルムアレイシートモジュール軌道上実証システム(SFINKS)」の 不具合事象に対する原因究明結果をご報告いたします。
「薄膜太陽電池フィルムアレイシートモジュール軌道上実証システム(SFINKS)」の状況について
平成28年12月9日(日本標準時、以下同)に打上げられた、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機搭載の「薄膜太陽電池フィルムアレイシートモジュール軌道上実証システム(SFINKS)」について、 12月9日23時16分に初めてテレメトリデータを取得し、その後約8分間(509秒)は正常なテレメトリを取得しましたが、データ取得が停止し、それ以降起動せずデータ出力のない状態となっております。
現在、継続してモニタするとともに、原因を調査しています。
対応状況、調査結果については随時お知らせいたします。
なお、「こうのとり」6号機については、12月14日3時24分に国際宇宙ステーション(ISS)との結合を完了し、物資の移送が進められています。
開発の背景
従来の宇宙用太陽電池=太陽電池の表面にガラスを貼り、厚さ数センチのアルミハニカム基板に貼りつけたもの
今後、通信衛星のオール電化など、宇宙機の電力要求が高くなってきている中、
軽くて変換効率が高い太陽電池の開発の要請
2015年 世界に先駆けて「高効率薄膜3接合太陽電池」の開発完了
開発経緯
2005年 | 高効率薄膜太陽電池セルの開発を開始 |
2009年 | 2接合型薄膜太陽電池セル(変換効率25%)の開発完了 |
2015年 | 3接合型薄膜太陽電池セル(変換効率30%以上)及びセルアレイシートの開発を完了、 SFINKSの開発を開始 |
2016年 | SFINKS開発完了 |
高効率薄膜3接合太陽電池の特徴
現在、実用可能な宇宙用太陽電池の中で、世界一の変換効率と軽さを実現した太陽電池
「軽くて高変換効率のため、オール電化衛星などの電力要求の高い衛星にも対応可能」
「非常に薄く柔軟性のある素材のため、小型衛星など衛星本体に貼ることも可能」
- 「軽い」
従来型 2.2g ⇒ 薄膜 0.33g(太陽電池1枚(約27cm2)あたり) - 「高変換効率」
従来型 29.5% ⇒ 薄膜 32% - 「柔軟性がある」、「パネル板に貼らなくてよい」
軽くて丈夫な構造のフレームに貼るだけで太陽電池パネルとして使用可能。
非常に薄いため、何枚かを電気的に接合してラミネートする技術(フィルムアレイシート)も開発。
SFINKSの概要
装置の構成 | ▪フレームに太陽電池フィルムアレイシートを貼付 ▪本体下部に電流、電圧、温度の計測装置がある |
実証試験内容 | 本実証装置ではシートの電流(Isc)、電圧(Voc)出力を測ることで、 ▪打上げ衝撃環境に耐えるか ▪宇宙の放射線や紫外線に耐えるか を実証する。 |
実証試験期間 | 「こうのとり」6号機 軌道投入~大気圏再突入まで |
設置場所 | 以下写真図示のとおり。もともと太陽電池パネルが設置してあった場所で、現在は実証試験用プラットフォームとして使用している場所に設置。 |
今後の予定
「こうのとり」6号機におけるSFINKS 軌道上実証の結果を踏まえ、海外市場も含めた薄膜太陽電池の市場開拓と、シェア獲得に向けた活動を行います。