研究の概要
人工衛星の「コンタミネーション」問題をご存知でしょうか。
コンタミネーションとは「汚染された状態」を、コンタミナントとは「汚染物質」を示す言葉です。人工衛星自身の材料から放出されたガス(「アウトガス」と言います。)が、人工衛星に搭載されている、 カメラのレンズや熱制御材料などの表面にコンタミナントとして付着することによって、人工衛星の取得データの劣化や熱制御材料の性能の低下といった問題が引き起こされます。(例を下図に示します。)
このコンタミネーションの対策を行う為には、人工衛星の運用中に、どこにどれだけのコンタミナントが付着するのか、この付着によりどのような影響がどれだけあるかについて、宇宙環境がコンタミネーションに与える影響も含めて知る必要があります。 そこで、これまでの研究では、これらを評価する手法を確立してきました。
本研究ではコンタミネーション解析ツールの高度化と、よりよい解析を実現するためのサポートデータの取得・整備、そして、コンタミナントの人工衛星表面への付着に伴う光学的影響を、宇宙環境によるコンタミナント自体への影響も含めて評価することを目的とします。 宇宙開発における高度なコンタミネーション解析が普及し、全ての宇宙機開発者がコンタミネーションの付着量、ひいては光学的影響を定量的に予測することが可能となることで、より適切なコンタミネーションの管理を実現できるようになると考えます。
また、従来は米国メーカー製品がデファクトスタンダードとなっていたアウトガス評価用QCMセンサを国産化し代替置換を進めるとともに、中性大気密度の研究への展開、宇宙以外の産業分野への応用も研究しています。