研究の概要
デブリ衝突による損傷リスクや軌道上環境保全に必要なデブリ対策を検討するために、デブリ環境のモデリング・評価技術の研究を実施しています。
まず、デブリ観測結果も用いてデブリ環境を調査し、そして九州大学と共同で開発したデブリ推移モデルNEODEEMを用いて今後のデブリ数の推移予測等を評価しています。デブリ推移モデルは費用対効果の高いデブリ対策の検討や、国際機関間スペースデブリ調整会議(IADC) 等での国際ルール議論のために不可欠です。
図1はIADCで6機関が予測した低軌道の10cm以上のデブリ数の推移予測です。今後打ち上げられる宇宙機がデブリ低減ルールを十分守ったとしても、今すでに軌道上にあるデブリ同士の衝突により数が増加してしまうことが予測されています。
近年は小型衛星が急増しており、コンステレーションと呼ばれる数百機以上の衛星群も打ち上げられているため、図2 のようにミッション終了後デオービット(PMD:Post-mission Disposal)遵守率の向上が非常に重要です。
図3 は衝突確率が高く、破片を多数発生させる可能性のある大型デブリを年間1~5個ずつ除去した場合の推移予測結果です。このように推移モデルを用いてデブリ除去対象やデブリ除去のミッション要求についても検討しています。
また、デブリの衝突リスクや軌道寿命などデブリに関わる評価技術を研究しています。図4 はデブリ衝突損傷リスク解析ツールTURANDOTを用いて解析した、宇宙機に対するデブリ衝突確率の解析例です。
さらに、地上から観測が困難なサブミリ~センチ級のデブリは、軌道上にどのくらいあるか精確に把握できておらず、世界的な課題となっています。微小デブリへの対策(微小デブリが衝突して宇宙機が故障しないように防護設計をすることや、防護が困難なサイズのデブリをこれ以上増加させないようにすること)のためには、軌道上の状況の正確な把握が必要です。そこで、図5のような微小デブリの衝突を検知するセンサを開発し、デブリモデルの精度向上に貢献することを目指しています。
研究実績
発表論文
- S. Kawamoto, N. Nagaoka, T. Hanada, S. Abe, “Evaluation of Active Debris Removal Strategy Using a Debris Evolutionary Model”, IAC-19-A6.2.10, 2019.
- S. Kawamoto, N. Nagaoka, T. Sato, T. Hanada, “Impact on Collision Probability by Post Mission Disposal and Active Debris Removal”, First International Orbital Debris Conference, 2019.
- S. Kawamoto, T. Hirai, S. Kitajima, S. Abe, T. Hanada, "Evaluation of Space Debris Mitigation Measures Using a Debris Evolutionary Model", Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol.16, pp.599-603, 2018.
- Maki Nakamura, Yukihito Kitazawa, Haruhisa Matsumoto, Osamu Okudaira, Toshiya Hanada, Akira Sakurai, Kunihiro Funakoshi, Tetsuo Yasaka, Sunao Hasegawa, Masanori Kobayashi, "Development of in-situ micro-debris measurement system", Advances in Space Research, Vol.56, pp.436-448, 2015.