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プロジェクト等
ISS搭載ライダー実証(MOLI)プリプロジェクト
研究内容

研究内容

気候変動対策への貢献

大気中二酸化炭素の増加に伴う異常気象や気候変動は、地球規模の水循環、生態系・生物多様性、農業生産などに直接的な影響を与えるほか、大型の台風や局地的豪雨などの極端現象の発生頻度が上がる場合には、防災・減災への対策を講じる必要に迫られるなど、社会システムの設計も左右する重要な問題です。気候変動の緩和策の一つとしてのREDDプラスの実施に必須である森林炭素のモニタリングにおいて、単位面積あたりの平均炭素蓄積を検証する手段の一つとして、MOLIの観測が期待されています。

ライダーでは森林の3次元構造を推定することが可能であり、とりわけ各階層の林冠からの反射強度を観測できることから、森林の高さの情報のみならず、森林劣化の度合いを評価することが期待されています。図はマレーシア国サバ州の熱帯低地林において、衛星ライダー(ICESat/GLAS)の観測波形と森林劣化の状況との比較を行った結果であり、波形の形状を解析することで森林劣化が発生しているかを識別することが可能だと主張しています1)

このように衛星ライダーの観測波形により、森林の劣化度合いが判定できることから、REDDプラス実施のための単位面積あたりの平均炭素蓄積量の検証に使用できると期待されています。

1) 環境省 環境総合研究推進費 課題名 D-1006 熱帯林のREDDにおける生物多様性保護コベネフィットの最大化に関する研究

生物多様性の研究

生物多様性には様々な定義がありますが、生物の多様性に関する条約では「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性および生態系の多様性を含む」とされています。その中で森林は、一般にその地域でもっとも生物多様性が高い生態系とされており、多様性の高い森林ほど機能が高くなることが知られています(相補性仮説)。

しかし、温暖化や砂漠化、人類による土地改変、外来種の侵入など、様々な要因によって世界的に生物多様性が低下しつつあります2)。これを防ぐために、広域における生物多様性を定量的かつ効率的に評価する必要があり、衛星などのリモートセンシング技術を活用することが有望と考えられています。生態系・種・遺伝子の3つのレベルにおける生物多様性を、リモートセンシング技術を利用して直接的に計測することは困難ですので、それらを代替しうるパラメータ(林冠高、森林構造、植物バイオマス)をリモートセンシングによって観測することが研究されています3)

Living Planet Index (LPI) により評価した生物多様性の経年変化2)

MOLIのライダー波形や複数バンド画像のデータを利用して生物多様性を表す定量的な指標を全球規模などの広域で整備することができれば、今後、速やかな保護を必要とする森林などのホットスポットを特定するうえでも貴重な情報となりうると期待されています。

2)
Global Biodiversity Outlook 3, vol.16, no.6. 2011.
3)
S. Goetz, D. Steinberg, R. Dubayah, and B. Blair, “Laser remote sensing of canopy habitat heterogeneity as a predictor of bird species richness in an eastern temperate forest, USA,” Remote Sens. Environ., vol.108, no.3, pp.254-263,

数値標高データ(DEM)への貢献

JAXAの陸域観測技術衛星だいち(ALOS/PRISM)や商用衛星画像による観測で、全世界をカバーする3D地図(AW3D)が整備されています。このデータはアジア、アフリカ、南米をはじめとする新興国で進むインフラ整備や近年世界各地で頻発する洪水等の災害への対策にて、必要な高さ情報を含む地図の需要拡大により、高精度化が期待されています。

上記のデータは衛星画像によるフォトグラメトリーで処理されていますが、その場合写真に写っている表層のみの情報(DSM)しか取得できません。例えば森林部における開発の場合、林冠の下の地形情報の需要がありますが、画像データだけでは対応が出来ません。

上記に対して、波形記録式のライダー観測により観測地点の樹木だけでなく、その下に隠された地面の高さ情報が取得できるため、フォトグラメトリーでは取得できないDEM情報の取得に貢献できます。

AW3Dと国土地理院DEMとの高さ情報の差分(伊豆)