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プロジェクト等 宇宙太陽光発電システム(SSPS)の研究 大型宇宙構造物構築技術

1GW(100万kW)級の宇宙太陽光発電システム(SSPS)を想定した場合、高度36,000kmの静止軌道上に数kmに及ぶ宇宙構造物を構築する必要があります。

これまで、人類が構築した最大の宇宙構造物(2021年現在)は、高度約400kmで運用されている国際宇宙ステーション(ISS)で、その大きさ(幅)は約100m、質量は約340tです。ISSは、ロシアのプロトンロケット又はアメリカのスペースシャトルによる複数回の打上げで軌道投入されたモジュールを、宇宙飛行士によるロボットアームの操作などにより、軌道上において有人で組み立てることで構築されました。

1GW級のSSPSを実現するには、複数回の打上げでモジュールを軌道投入し、軌道上で構築するという基本的な方針はISSと共通ですが、コストや安全性の面から有人で組み立てることが困難なため、完全無人での構築技術が必要と考えられます。ISSと比較してサイズが一桁大きいこと、軽量化の要求が一層厳しく、宇宙機の剛性を確保しにくいことなどから、大きな技術的チャレンジが必要です。

展開型軽量平面アンテナの軌道上実証(DELIGHT)

展開型軽量平面アンテナの軌道上実証DELIGHT(DELIGHT: DEployable LIGHtweight planar antenna Technology demonstration)では、新型宇宙ステーション補給機HTV-Xの1号機を軌道上プラットフォームとして利用し、将来の大型宇宙構造物構築を見据えた展開型軽量平面アンテナに関する実証実験を行います。

図1 DELIGHTのミッションイメージ

研究の背景

宇宙太陽光発電システム(SSPS: Space Solar Power Systems)は、クリーンなエネルギーを大規模に、安定的に、多地点に供給できる可能性を有しているため、エネルギー、気候変動、環境等の人類が直面する地球規模課題の解決の可能性を秘めています。

図2 SSPSのイメージ(マイクロ波Basicモデル)
写真提供:J-spacesystems

これまでに世界で様々なコンセプトのSSPSが提案されていますが、どれも数百m~数kmの大型宇宙構造物を必要とします。しかし、現在の技術レベルを踏まえると、その実現に向けては、構造物の規模を段階的に拡大しながら軌道上実験を積み重ねる必要があります。また、途中段階の成果であっても社会還元できることが研究開発を継続するために必要です。そのため、静止軌道からの降水観測が可能なレーダ(以下「静止降水レーダ」という)への適用を見据え、面積30m×30m以上、面密度3kg/m2以下の大型平面アンテナを実現することを当面の目標としています。静止降水レーダのイメージを図3に示します。

図3 静止降水レーダのイメージ

この目標を達成するための主要技術課題は、30m級大型平面アンテナの構築と軽量化です。そのため、これらの課題を解決するために「パネル展開・結合機構」と「軽量平面アンテナ」を提案し、研究開発を実施しています。

DELIGHTミッションの概要

DELIGHTでは、HTV-X1号機を軌道上プラットフォームとして利用し、「パネル展開・結合機構」を実装した展開型軽量パネルを軌道上で展開し、その際の展開挙動や展開後の構造特性を計測します。また、同パネルの一部に搭載した「軽量平面アンテナ」で地上局からの電波を受け、受信レベルの計測を実施します。さらに、ミッションの意義・価値を高めるために、次世代宇宙用太陽電池セルの実証も実施します。DELIGHTの全体イメージを図4に示します。

図4 DELIGHTの全体イメージ

技術的課題への今後の取り組み

30m級大型平面アンテナおよび更に大型の宇宙構造物の実現に向けて、構築と軽量化以外に、以下のような技術的課題があります。これらの課題を解決する方法も並行して検討していきます。

  • 構築中/構築後の姿勢・軌道制御
  • 熱変形補償
  • デブリの影響評価
  • 保守、解体