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プロジェクト等 宇宙太陽光発電システム(SSPS)の研究 SSPSに関してよくある質問(FAQ)

宇宙太陽光発電システム(SSPS)は、いつ頃実現可能ですか?

現在は21世紀後半以降の実現を目指して研究開発を進めています。(以前、1GW(100万kW)級の大規模SSPSの実現目標時期を2030年代としていましたが、研究開発を進めるなかで、同時期の実現は難しいことがわかり、研究計画を見直しています。)

なお、これは現時点での想定ですので、今後、宇宙輸送コスト低下や無線エネルギー伝送技術等の技術の進捗も見ながら、適宜見直していく予定です。

宇宙太陽光発電システム(SSPS)で人類のエネルギー問題、二酸化炭素排出増大を解決できますか?

人類のエネルギー問題、二酸化炭素排出増大の解決には、SSPSというひとつの発電手段だけではなく、省エネ技術や他の再生可能エネルギー源の開発、化石燃料排出ガスからの二酸化炭素回収技術などと組み合わせて複合的に取り組む必要があると考えています。

SSPSによって宇宙からエネルギーを地上に送ると、地球温暖化・気候変動を加速させないでしょうか?

地球温暖化・気候変動は、地球に照射された太陽光エネルギーのうち、宇宙空間に再放射される割合が二酸化炭素等の温室効果ガスの増加によって乱されることによって生じます。仮に軌道上に100機程度の1GW級SSPSを想定したとしても、それらにより追加で地球に持ち込まれるエネルギーは、太陽から地球に降り注ぐエネルギーの総照射量の数十万分の1以下で、影響は小さいと考えられます。

研究開発の対象をマイクロ波とレーザー光のどちらか一方に絞り込むことはしないのですか?

SSPSのように遠距離を無線エネルギー伝送する手段では、マイクロ波とレーザー光が候補となります。両方とも同じ電磁波ですが、波長が異なる(マイクロ波はcm~mm、レーザー光はμmオーダー)ため、それぞれ長所と短所が存在します。詳しくは下の表をご覧ください。 このため、SSPS研究チームでは、現段階では両方を研究対象としています。

マイクロ波の特徴 レーザー光の特徴
長所 最適な周波数を選択することで雲や雨の影響を殆ど受けず、天候に左右されない。
波長が短いため、装置やシステムを比較的小型化しやすい。
地上の太陽光発電設備をそのまま受光サイトとして活用できる可能性がある。
短所 マイクロ波はレーザー光と比較して波長が長いため、宇宙側、地上側共に大規模なシステムとなる。
雲・雨・大気の影響を受けやすい。
人(眼)へのダメージを避けるため、十分な安全配慮が必要。

マイクロ波やレーザー光の安全性の心配はないですか?

マイクロ波、レーザー光のどちらも、強度が高い(エネルギー密度が高い)場合、安全性の心配があります。「飛んでいる鳥が焼けて落ちてくるの?」という御質問をいただくことがありますが、そういうことが起きないエネルギー密度にします。それに加えて受電設備内への人の立ち入りを防止する等の安全対策を行うことで地上の安全を確保することができます。これらの安全性に関する研究は、今後も引き続き進めていく必要があります。

どれくらいのお金がかかるのでしょうか?

現在は、SSPS全体のシステム検討を行っている途上ですので、SSPS実現にかかる経費の算定は行っておりません。
(以前の試算では、「1GW級の発電所を40年間運用し、1kWhの電力量を8円で供給するという目標をおいた場合、1基あたりの建設費は1.2兆円*注 以下に抑える必要がある」としていました。 *注 1.2兆円で「建設可能」と確認されたという意味ではありません。)

宇宙太陽光発電システム(SSPS)について

難しい課題は何ですか?

課題は複数ありますが、主な課題としてここでは2つ挙げます。

ひとつは低価格・大量輸送の宇宙輸送システムです。1GW級のSSPS発電所は数万トンの質量の発電所となることが想定されますが、その場合、宇宙への輸送費(単位質量あたり)を現在の数十分の1程度まで下げ、かつ、1日100t級の大量・高頻度の輸送が必要です。これには、完全再使用型の大型宇宙輸送機が必要となると考えられます。現時点では技術的ハードルが高く、その実現時期の見通しは得られていません。なお、内閣府宇宙政策委員会での宇宙輸送システム長期ビジョンワーキンググループにて検討された宇宙輸送システム長期ビジョンでは、2040年以降において実現が期待される宇宙輸送システム手段として、再使用型輸送系実現への取り組みに関する議論がなされていました。

もうひとつは、長距離無線エネルギー伝送(送受電)技術です。マイクロ波、レーザー光、いずれを使用する場合であっても、数百km(低軌道-地球)ないし36000km(静止軌道-地球)の距離、および巨大なエネルギー(1GW)を伝送するには多くの技術的ハードルを越えなければなりません。現在、SSPS研究チームでは、この研究開発に特に力を入れており、地上実証実験を行っています。

マイクロ波無線エネルギー伝送技術
レーザー無線エネルギー伝送技術

また、大きな課題として、マイクロ波、レーザー光の安全性の問題があります。人への安全のみならず、航空機、電離層、電子機器などへの安全性も考慮する必要があります。
この他に、大規模送電を行う場合の地上受電設備の設置場所(1GW級では直径2~3kmが想定されています。)の問題、静止軌道を使う場合には、静止軌道上での宇宙機の配置場所(スロット)の確保の問題があります。また、送電にマイクロ波を用いる場合は、そのための周波数を確保する必要があります。

SSPS実現へ向けて、どのように研究開発を進めるのでしょうか?

SSPSを実現するためには、多くの技術課題を解決する必要があります。また、技術課題を解決するために長期にわたる研究開発を行う間に、社会や経済の状況が変化してしまうことも、大きな課題です。そのため、技術研究・技術開発を着実に進めるとともに、その中間段階においてもそれらの成果を世の中に還元することで、SSPSが社会から必要とされ、貢献できるようにしていくことを目指しています。