数値解析技術および関連技術の高度化と実用化を進めることにより、航空宇宙技術の発展・信頼性向上に寄与するとともに、プロジェクト等の要請に応えることにより、数値解析技術の実利用普及促進および機構事業への貢献を果たすことを目的とし、音響・振動解析、燃焼・乱流解析、多分野融合解析並びに解析インフラ等に関する技術研究を行っています。
音響・振動解析は、音による衛星加振の解析手法構築、ヘリコプタブレードを事例とした低騒音設計技術の確立、ロケット射場への散水による減音メカニズムの解明、遷音速バフェット解析技術の構築および射場の音響伝播高速解析手法の確立を目指しています。燃焼・乱流解析は、超臨界圧燃焼解析および液滴燃焼解析の燃焼モデル高度化および計算効率向上により、ロケットエンジンの燃焼器複数エレメントの非定常解析から燃焼器サブスケールレベルの解析を可能とすることを目指しています。多分野融合解析は、格子生成技術、並列化技術、プラットフォーム技術、検証技術等を高度化し、応用を通じて数値シミュレーションの実用化に資することを目指しています。解析インフラは、遠隔地間での大容量データ転送・共有を高速化する技術を確立するとともに、組み込み系の技術を利用することで数値演算やデータ処理の効率化を図ることを目指しています。
航空宇宙機に共通的に発生する非定常流や音響・振動問題を解決するため、数値シミュレーション技術を活用した研究を進めています。例えば、ロケット打上げ時にペイロード(衛星など)が轟音で振動する問題(図1)について、その予測法を確立し、ロケット打上げの信頼性向上に役立てることを目指しています。また、住民への被害が大きいヘリコプタ騒音を低減するため、最適化技術を適用して低騒音/高性能ブレードの設計法確立を目指しています(図2)。


航空宇宙機の推進系における燃焼現象の予測・評価を目指して、燃焼器噴射エレメントまわりの非定常燃焼解析(図3)や液体燃料の微粒化過程の解明・モデル化(図4)を行っています。さらには、乱流の微細構造を詳細に解析し、実形状の航空機等に適用できる精度の高い乱流解析および乱流モデルの研究も行っています。

図4 表面張力波による燃料液糸からの液滴生成
数値シミュレーションやデータ処理の処理時間短縮・機能性改善のために、スーパコンピュータの内部におかれている大容量・高速なファイルを遠隔から高速に扱える遠隔ファイルシステムの構築の研究や、JAXAの持つアプリケーションを高速・高効率に実行する次世代スーパコンピュータのハードウェアアーキテクチャの研究を行っています。これまでに、利用者レベルでの高速かつ高信頼なファイルシステムを構築し、太平洋を越える長い経路における実験を行ってきました。また、高速ネットワークの運用を通して、ネットワーク管理技術の蓄積を行っています。
数値シミュレーションは様々な自然現象や社会現象を計算機上の数値計算により解析し、それらの現象の本質的機構の理解や予測につなげようとするものです。工学的には製品の性能予測や設計に利用され、今後もますます重要性が高まります。
さて、この数値シミュレーションの手法では、
という段階を経て結果が得られます。
数理モデルチームでは、連続モデル・離散モデルの妥当性や精度について研究を行う事で、数値シミュレーションの精度・信頼性の向上や適用範囲の拡大を目指します。
宇宙航空研究開発における計算科学の基盤研究に関する委員会(以下、本委員会と記す)は、宇宙航空研究開発機構(以下、機構と記す)における計算科学とその応用技術の基盤研究の進め方について2005年度下半期に6回の会議を開き審議を行った。
計算科学はほぼ全ての理工学分野において欠くことのできない基本的なツール(方法論)としての地位を獲得している。機構において2005年10月に実施 された組織改編では計算科学技術の研究開発体制もプロジェクト対応と研究開発基盤の醸成という課題を両立させるべく再編成された。本委員会は研究開発基盤 としての計算科学の研究開発体制を中長期的・短期的双方の視点で議論すべく設置されたものであり、中長期的な方針と短期的なアクションアイテムの提言を行う事が委員会の使命とされた。
本報告では、第一部において委員会の設置とその課題を確認した後に、第二部では中長期的に目指すべき方向性とその運営の基本方針について提言を行う。また、第三部では第二部の結論に基づき現状で検討すべき短期的なアクションアイテムを提言する。
(宇宙航空研究開発における計算科学の基盤研究に関する委員会)
今後の宇宙航空研究開発機構における計算科学の基盤研究のあり方について(pdf形式 173KB )