有人宇宙活動技術の研究
1960年代に人類が初めて宇宙空間へ進出して以来、多くの宇宙飛行士が宇宙空間へ行き、宇宙遊泳や各種実験などを行ってきました。現在、高度約400kmを飛行している国際宇宙ステーション(ISS)には、宇宙飛行士が定期的に滞在し、宇宙空間で生活を送っています。
人間が宇宙空間で生活するために最低限必要なものは何でしょう。それは、酸素と水と食料です。これらは地上から持っていったり、装置を使って宇宙空間で生産したりする事で供給しています。しかし、宇宙空間に一度に持って行ける物の量は限られています。今後、火星などの遠方にも人類の活動の場を広げるためには、人の排せつする二酸化炭素や廃棄物から生活に必要な物質を回収する必要があります。
新吸着剤
多機能活性炭と金属錯体の組合せで、宇宙服用、輸送系用、月面基地用と広範な空気再生用途に適用し、省リソース化を目指します。
多機能活性炭(シリカ+ゼオライト+活性炭)
(1)素材の特徴
- 原料の籾殻は20%のシリカを含有
- 燻蒸でシリカ50%+活性炭50%が生成
(2)性能設計手法
- シリカは薬剤で減量が可能
- シリカは薬剤でゼオライト化が可能
- 活性炭は低温プラズマにより減量が可能
- シリカ、ゼオライト、活性炭の自在な配合
(3)構成成分の特徴
- シリカは水蒸気吸着剤
- ゼオライトは水蒸気とCO2の吸着剤
- 活性炭は汎用の有害ガス吸着剤
(4)期待する機能
- 1) CO2、水蒸気、有害ガスの汎用吸着剤
- 2)有害ガス吸着に特化した高性能活性炭
金属錯体

*注:白は金属錯体で黄色が被吸着物質(アセチレン)
(1)素材の特徴
金属イオンに有機分子を配位結合によって結合し、分子レベルの隙間を形
(2)性能設計手法
ゼオライト等の共有結合物質は隙間の調節が困難なのに対し、金属錯体は金属イオンと有機分子の組合せのバリエーションが豊富で、隙間の設計が容易で被吸着物質を選択可
(3)期待する機能
- 1)湿度がある空気中からCO2のみを吸着
- 2)活性炭では除去出来ない特定の有害ガスを除去
水再生
地上用としては多く使われているDLC(Diamond Like Carbon)被膜について、その耐摩耗性、耐腐食性を活かした宇宙機器への適用を目指した研究を行っています。
水再生のしくみ
空気再生
人間は一日に1kg(600リットル、ドラム缶3本分)の二酸化炭素を排出します。二酸化炭素に含まれている酸素を回収する空気再生装置の研究を進め、高効率のシステムを目指しています。
水分解装置
生成した水を電気分解によって水素と酸素に分解します。この酸素を人に供給することで、「空気のリサイクル」という流れが生まれます。
サバチエ反応と水電解の結合
宇宙空間では微小重力状態となるため、気液の分離が困難となります。生成した水蒸気とメタンの分離には、水だけを通す「イオン交換膜」を利用しています。この方法は微小重力場における水電解にも有効です。
二酸化炭素除去装置
空気中の二酸化炭素をゼオライトなどの他孔質を用いて分離し、濃縮します。空気の0.04%の二酸化炭素を96%に濃縮することが可能です。
二酸化炭素還元装置
分離した二酸化炭素を水素と混合し、ルテニウム触媒と一緒に科学反応させ、水とメタンを生成します。(サバチエサバチエ反応)
サバチエ反応:CO2+4H2→2H2O+CH4
廃棄物処理
有人宇宙活動によって発生する有機廃棄物を、物理化学的手法により無公害かつ迅速に処理するための研究開発を、民生技術への応用を図りながら実施し、宇宙技術に再還元します。

湿式酸化の模式図