研究紹介

  1. ホーム>
  2. 研究紹介>
  3. 過去の研究>
  4. 宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)に搭載された宇宙環境観測装置「KASPER」について

宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)に搭載された宇宙環境観測装置「KASPER」について

2015年8月19日(水)に打上げられた宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)に搭載されている宇宙環境観測装置「KASPER」(キャスパー)で実施する実験、観測について紹介します。

KASPERの概要

KASPERKounotori Advanced SPace Environment Research equipment)は、帯電センサとスペースデブリセンサ(以下、デブリセンサ)で構成される宇宙環境観測装置です。

KASPERの主な目的は、①帯電センサによるHTV5単独飛行中及び国際宇宙ステーション(ISS)への係留前後でのHTV5機体電位を計測し、軌道上のプラズマ環境や宇宙機の姿勢・軌道がHTV機体電位へ与える影響を調べること、 ②デブリセンサによる宇宙機や有人船外活動の深刻な障害となりうる微小なスペースデブリを計測する技術を実証することです。

KASPERの構成とミッション

KASPERは、表1に示す4つのセンサから構成されています。図1に各センサの配置を、図2にHTV5での搭載位置を示します。HTV5はH-IIBロケットで打ち上げられますが、KASPERはHTV5のロケット分離後に電源を投入し、単独飛行中をはじめ、 ISS係留中とその後のHTV5再突入まで連続運用します。そのためミッション期間はHTVの運用期間と同じ40日程度を見込んでいます。

表1 KASPERの構成

センサ名 概要 目的
帯電センサ TREK-3G 接触型表面電位計測装置。HTVの表面電位を測定する。 HTV表面電位および周辺空間プラズマ電流(電子密度)を測定することにより、時々刻々と変動する宇宙環境条件、軌道位置、飛行姿勢等がHTV機体電位へ与える影響を評価する(TREK-3GはHTV4号機から継続して搭載する)。
LP プラズマ電流計測装置。HTV周辺の電子密度を測定する。
デブリセンサ SDM
:Space Debris Monitor
フィルム貫通型微小デブリ計測装置。100μm~数mmサイズの微小デブリの衝突検出と衝突したデブリの大きさを計測する。 100μm~数mmの微小デブリの観測技術の実証。適切なデブリ防御設計を行うために、これまでほとんどデータが取得されていない微小デブリ領域を軌道上で計測する技術を確立する。
CDM*
:Chiba-koudai Debris Monitor
圧電素子型デブリ計測装置。数μm~100μm以下の微小デブリの衝突を検出する。
サイズ75×50×12cm、重量約8kg、消費電力30W(ヒーター電力を含む)

*注:CDMは、当機構と千葉工業大学が共同で開発したものです。

KASPERから得られる成果

①帯電センサ

帯電は宇宙機の機器の故障の原因となるため、帯電センサによる電位情報の蓄積を行うとともに解析精度の向上を図ります。また宇宙機周辺のプラズマの帯電電位との相関関係を把握し、併せて帯電に関わる設計基準に反映させ、宇宙機の設計評価精度の向上を図ります。

②デブリセンサ

100μm~数mmのサイズのデブリは、宇宙機や宇宙での有人活動に深刻な障害・事故を引き起こし得るにも関わらず、その分布はほとんど分かっていません。適切なリスク評価と防御を行なうために、この空白領域を計測する技術を確立します。

このページのトップへ戻る